4人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
***
夢は見るけど、こんな鮮やかなのは初めて。
私は草原にいる。周りを鳥が飛んでる。いや、よく見るとそれは文庫本。羽ばたいてるみたいに。
もちろんすぐに夢だとわかった。
私は切り株に座っている。隣の切り株に誰かいる。それは赤いケープを着た三頭身の小さな王様だった。
「だれ?」
まぬけな質問。王様だよね、どっから見ても。
「王様やん。」
王様は大阪弁だった。大阪に国はないぞ。
「小さいね。」
「ちょっとな。150ミリや。あんた、もっと感動しいや。王様に会ってんねんで。」
「あっ、すいません。」
私は立ち上がって大げさに言う。
昔の映画のように、スカートの裾を持って腰を折って、頭を下げて見せた。
「ええ、ええ。」
王様は顔の前で手をひらひらさせている。ちょっと赤い顔。照れてるの?王様のくせに。
「ええ気持ちの場所やろ?ここは本の森や。あんた今日優しかったから。それにいっつも本屋でバイトでもないのに、本、大事にしてくれるから、ご褒美に連れてきたったんや。」
本の国の王様?
そりゃどうも。
夢の中だから、お礼もそこそこに思いっきり深呼吸をする。
夢の中だけどなんだか気持ちよかった。
最初のコメントを投稿しよう!