本の王様

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「ええって。そんなん気にしな。あんたが本好きやと思ってくれてることは知っとるから。」 そしてまた顔の前で、手をひらひらさせる。 「それでや。あんたが書いてる投稿サイトな。読んでもろたら、一等賞になれるやろ?あんたは全然あかんけどな。」  王様はよく知っていた。  そもそもコンピュータ苦手なんだ。スマホも、サイトの使い方も読み方も、もひとつよくわからないしね。 「でもね、私の物語を読んでくれる奇特なありがたい人もいるんだよ。好きだって言ってくださったり。嬉しいコメントいただくこともあるんだ。お星もくださるんだよ。」  そうなんだ。それがとても幸せなんだ。  誰かが待ってくれている。  小学校の数年だとしても、存在しないみたいに扱われた経験のある私には、その幸せがとてもわかるんだ。  昔、哀しいを体験したご褒美だと思う。嬉しいと思えることがいっぱいある。  帯が破れた本に少し似てるかな、私のこれまでの人生。  チラッと彼のことを思った。お尻のポッケにいた文庫本を思い出していた。 「ジャラジャラジャラジャラ パッパラ~!」  王様は(くち)ドラムロールと、(くち)トランペットのあと、キオツケをしてわざとらしく敬礼する。 「発表いたします!」  がんばっても大阪弁だから。     
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