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「そう?でもやっぱり俺は自分がその人たちの重要な役目を負えるってのが嬉しいかな。言わば俺が重要なキーパーソンな訳じゃん」
カバンから自分の携帯を取り出すと、ベッド横の机の上のメモにすらすらと何かを書く。
「ハイ」
そう言って満面の笑みで俺にそれを差し出す。
「だから教えてあげる。臣は大好き、ケイさんは大切。そんな俺にとって存在の大きい二人が俺のお陰でくっつくなら……二人に必要としてもらえるなら俺は嬉しい。それにきっとケイさんが幸せになる為には臣が必要なんでしょ。だから俺は臣に手を貸してあげる。頑張ってね」
「ありがとう、まぁ……」
会って数時間しか経っていないが、眞人の事は大切に思う。
話も分かるし我侭も言わない。
本来ならこういう子と付き合えばいいのだろう。
それでも俺が望んでやまない人物は人の話は聞かないし、自分の欲求が第一で、興味の無い人間には頭のメモリーを使うことを嫌う、我侭で独裁者で……。
それでも俺はそんな女王を守るべき騎士で、何でも言う事を聞く下僕になる事を選んだ愚かな平民だ。
「絶対に、絶対に蛍を振り向かせるよ」
眞人を抱きしめ俺の決意を聞いてもらう。
差し詰め眞人は俺の決意表明の証人だ。
「大丈夫。ケイさんと俺は好み似てるから。俺が臣を好きならあの人も絶対好きなはずだよ。大丈夫臣は上手くいく!……だからさ」
一旦そこで言葉を止め、顔を上げ俺の唇に自分のそれを押し付ける。
その体は震えていたが俺にはそれを止めることは出来ない。いや、してはいけないのだ。
「今日だけで良いから臣の恋人にして。ちゃんと、ちゃんと忘れるから……これが最後。ね?」
「……わかったよ」
零れ落ちる涙を指で拭い、桜色の唇に口付ける。
俺が声を掛けなければこんな辛い、悲しい思いを経験しなくてよかった眞人。
それでも俺は声を掛け、眞人を傷つけなければ蛍にまで辿り着かなかったのも事実だ。
だからその償いの意味もこめて……。
今日だけは眞人を蛍のように扱おうと決めて、俺達は再びベッドに体を預けたのだった。
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