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眞人から渋々ながら了承のメールが来たのを確認すると、何だか力が抜けてしまった。
大きな仕事をやり遂げたからだろうか?
実際には漸くスタート時点に立っただけで、何も進んでいないのだが。
これで蛍に遭える。
五年前のような過ち犯さない。。
断られてたっていい。
自分の気持ちを素直に伝えたい。
『俺玉川蛍って言うの。宜しくね津田くん』
高校に入って偶々席が前後になったのがきっかけだった。
同じ男を形容するには不向きな言葉だが、初めて見た時不覚にも『綺麗だ』と思ってしまった。
十五年間生きていた俺の価値観をぶっ飛ばすくらい、それくらい蛍は俺の中で衝撃となって降り立ったのだ。
ところが知れば知るほど容姿を裏切るような女王様っぷりに、嫌になった時もあった。
それでも俺だけに見せる様々な顔を知って行くうちに、恐らく惹かれていってしまったのだろう。
きっとあの時蛍に声をかけられた瞬間に俺は恋に落ちたんだ。
あれから約束の日まで一週間ほどあったが、先の楽しみが見えているととても早く過ぎていくから不思議なものだ。
朝起き学校に行って勉強を教えて家に帰ってきて寝る。
その間敢えて蛍の家にはいかなかった。
そんな今まで普通に過ごしてきていた、ありきたりの生活でも胸が弾むから不思議だ。
「津田先生、生き生きしてるわね」
「津田っち楽しそ~」
などと周りから言わるほどだ。
会えると分かるだけでこんなに心が躍るのだ。
もしもこれが付き合えることになったら一体俺はどうなってしまうのだろうか。
怖くもそして楽しくも思える。
そして運命の日が訪れる。
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