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「あれ?ハジメだよね……?連絡くれたよね?俺ケイだけど……」
俯いている俺の顔を覗き見ようと屈んだ蛍の左腕を力を込めて引く。
目の前の俺に意識を向けていた為、予想もしない方向から不意に力をかけられた蛍は、慣性に従いバランスを崩しこちらに体を傾かせる。
倒れこむ寸前で更に腕を引き、男にしては細い肩をしっかりと抱え込む。
「うわっ!っと……すみま――――――ッ」
よろけて抱きとめて貰った礼を言おうと顔を上げたところで蛍の顔が固まる。
その主を確認するや、俺の腕の中で暴れ始め抜け出そうと試みる。
「蛍……」
何度か体を捻り抜け出そうしているが、俺の腕の力が緩まないのを確認すると盛大に舌打ちを打つ。
先ほどもまでの笑顔を隠し、憤怒の表情で自分を抱きとめる人間……俺を睨み付ける。
その視線に俺が怯まないのを確認すると、次に目の前に居る待ち合わせの人物…ハジメに対象を変える。
「クソッ!嵌めたなっ!」
「……ごめん、ケイさん……ごめん。でも、俺はケイさんの……」
俺の指示に従いハジメを装っていた眞人は、帽子やらサングラスやらを取外し蛍に向かって頭を下げていた。
自慢の先輩だと言っていた。
尊敬しているとも言っていた。
結局眞人は俺の策略に加担したた為、先輩である蛍を裏切ってしまったわけである。
だから謝っているのだろうけど……何も眞人が謝る必要なんて無いのに。
悪いのは俺だ。
「蛍、まぁへ怒鳴るなら俺に怒鳴れ。まぁは悪くない、俺がそう言ったんだ」
涙目になっている眞人が不憫で、眞人を庇う。
眞人は俺と蛍とを交互に視界に映し慌てていた。
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