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「はぁ……。前にも言ったけどやっぱり俺基臣とのエッチが一番気持ち良い」
生まれたままの姿でうつぶせに寝転がり、シーツだけを身に纏った蛍が言った。
その言葉を想いが通じ合った相手に言うのは聊かどうかと思うが、満足しながら体を時折ピクピク震わせる蛍を見ていると不思議と気持ちが落ち着いてくる。
蛍をこのような状態にしたのは俺なのだから。
別に他の誰と比べられたって良い。
そいつらは蛍の過去であって、蛍の未来に映っているのは俺なのだから。
いや俺だけなのだから。
だがやはり達観していても面白くは無いわけで、むくむくと沸き起こってくる嗜虐心から少々苛めてやろうかと思案する。
床に脱ぎ捨ててあったジャケットから煙草を抜取り、口に咥え火をつけた。
「そう言ってもらえて光栄だわ。よっぽどお前の昔の男はテクが無かったんだな」
俺のその言葉から先ほどの言葉に対して嫌味を言われているのだと感じ取ったらしい蛍は、クスリと笑うと俺の口から煙草を奪い取り自分の口に運ぶ。
「もう妬いちゃって、可愛いね基臣。別に妬くんだったら妬いてもいいけど、もっと自分に自信持ったら?」
「は?」
蛍は灰が落ちぬよう、体を起こしながら紫煙を燻らす。
「確かに基臣とのエッチが気持ちいいって言ったけど、それは高校の頃から俺の体を良く知っているから基臣が気持ちよくできるんだよ。それに心が通じ合ってるからさらに快感は倍増だね。キスも一番基臣が気持ち良いし、基臣になら抱きしめられただけで起つよ俺」
吸殻を灰皿でもみ消し、俺の反応を伺うように視線を向ける。
正直言ってあんなことを言われた俺は有頂天である。
先ほどまでの胸の中にあった小さなイライラはどこかへ消え去ってしまった。
恐るべき蛍の言葉である。
言葉一つで俺を上げるのも下げるのもお手の物。
さすがは俺の女王様。
俺は嬉しさを表現すべく、横で寝ている蛍を引き寄せ抱きしめた。
蛍はそんな俺の行動が気に入ったのか、機嫌が良さそうに収まっている。
「なぁ、さっき言ってたけど蛍は俺を見た瞬間に好きになってたってホント?」
「うん、ホントホント。一目惚れ」
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