182人が本棚に入れています
本棚に追加
惜しみもなく笑顔を振り撒き、俺に体重を預け体を擦り付ける様は猫のようである。
よくよく考えれば印象的なつり目も、気分屋な性格も猫そっくりだ。
俺の腕を調節し自分が寝やすい体性を取ると、蛍の寝る準備は完了したようであった。
「最初にね見たときに、すごい顔が俺好みだったの。それで声かけて仲良くなって見たら、性格も良い奴じゃん。一目惚れだったけど、俺は別に友達のままでいと思ってたんだ。だけど…」
「だけど?」
髪を梳きながら先を促すと、蛍は眉間にしわを寄せながら口を開く。
「お前が告白されたとか言ってくるから、焦った。だからあの体育の時間にお前を誘惑した。幸いお前が俺の顔を嫌いじゃないのは一緒に居て分かってたからね。存分に誘惑させてもらいましたよ。それで自分の体使って、俺から逃げられないようにした」
そんな蛍のカミングアウトを聞き、髪を梳いていた手が止まる。
すると蛍は片目を開け、『俺って怖い奴でしょ?』と茶化しながら言う。
「それからは自分の欲求に素直になったの。基臣に抱かれたい時に誘う。基臣が女の方行きそうだったら誘って俺の方に来てもらったり。その為に生徒会長にもなってみたんだよ。自由にできる時間と、場所が欲しかったから。全部基臣のため」
蛍から語られる事実は俺には衝撃的過ぎて、凄い告白をされているんじゃないかと自惚れてしまうが、恐らくそれでいいはずだ。
目の前の女王様は俺を中心にして高校生活を謳歌してくれてたようで、気づけなかったその頃の自分を張り倒したい衝動に駆られる。
「そうとは知らず……きっとお前を沢山傷つけた」
瞼や頬にキスを落とすと、蛍はくすっぐったいのか俺の手元から逃げてしまう。
床に落ちていたシャツを羽織ってバスルームへと向かうようだ。
先ほどの情交に手を抜いてなど居ないし、俺自身も少し疲労を感じるくらいなので、受身の蛍はそれ以上に疲れているはずだ。
だが自分の足で立ち、歩いて行く様を見させられると蛍との経験値の差をまざまざと見せられているようだ。
慌てて蛍の後を追いバスルームへ向かうと、そこには彼が先ほど羽織ったシャツが落ちていた。
来ていた本体は音から察するに、シャワーを浴びている最中なのだろう。
扉を開けると丁度泡を流し終えた蛍がいた。
最初のコメントを投稿しよう!