老人と温泉

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「私より、君が着替えたほうがいい。そのままでは風邪を引く」 言われて初めて制服が濡れて胸元が透けているのに気付いた。老人の視線はそこに向いていたのだ。 「私なら大丈夫です。ここは暖かいですし」 「ふむ。君のような若い人がここにいるとは知らなかった」 「お客様も、長湯のしすぎです」 老人が麻衣の胸元ばかりを見ているので、少しだけ苦言した。 「うむ。若い嫁さんをもらうので、ナニを元気にしようと思ってきたのだ。そっちの方ができないと結婚してくれないと言うのでな」 老人は真顔で嘘を言った。実際は、白虎温泉の経営が思わしくないと聞き、買収を視野に密かに視察に来たのだ。 「それは、おめでとうございます。もう、合格ですね」 「ああ。方々の温泉をまわったが、ここの湯が一番だ」 眼だけで笑って見せ、「どれ」と起き上がろうとする。 麻衣が背中に腕を回して起きるのを助けた。
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