海咲ちゃんと私のこと

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海咲ちゃんと私のこと

 私こと小鳥遊野乃花は、篠崎海咲ちゃんと良き親友として清く正しく美しく付き合ってきている。多分、海咲ちゃんはそう思っているだろう。  表面的にもそのように見えているはず。  けど、実際のところは少し違う。  問題は私の側にある。  あえて単刀直入に言おう。  私は彼女が好きだ。愛している。お付き合いしたい。その先へも行きたい。革命起こして政権勝ち取って法律変えて同性婚もしたい。それぐらい好きだ。従って、下心も満載だ。  何しろ海咲ちゃんは可愛い。  綺麗な黒髪、くりっとした丸い目、ふっくらとした頬と唇。全体的に丸みのある体つきで、その肌は美しき白。むっちりとした二の腕や太ももが放つエロチシズムの波動は、プレイガールが百人こぞったところで太刀打ちできまい。  むしゃぶりつきたい衝動に日々耐えていることをもちろん彼女は知らない。  人当たりも良く、明るく話題も豊富な彼女の周りには、よく人が集まっていた。その輪に入り込み、談笑する自分をどれほど夢見た事か。  だが私なんて存在は、凡庸丸出しの十派一絡げ的脇役然とした一女子生徒道を邁進し続ける、いわば凡骨にすぎぬ。  そんな道端の石ころ風情が、玉のような……そう、真珠のような海咲ちゃんに気安く話しかけられるはずもない。読書の振りをして、集団の中にあって尚輝く海咲ちゃんを盗み見するのが精々というわけだ。  何やら親し気な女子共が、彼女の二の腕や頬に気安く触れているのを見るたびに、全身を血が噴き出すまで掻き毟りたいほどの嫉妬に駆られる日々は実に辛かった。  その衝動を封じ込めるために、幾冊もの文庫本に私の爪が付きたてられた。  そんな私と海咲ちゃんがどうやって親友にまでなったかと言えば、話は高校一年生の頃まで遡る。
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