出会った時のこと

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出会った時のこと

 高校一年生の時、私と海咲ちゃんは運命に導かれて同じクラスになった。  よくある自己紹介の時に存在を認識し、なぜかそこで鼓動が突然早くなった。彼女から目が離せなくなったかと思えば、その次には顔が熱くなった。海咲ちゃんはクラスをゆっくりと見回しながら自己紹介していた。当然私とも目が合う。その瞬間、体に衝撃が走った。  思えば、幼き頃から殿方には何の興味も湧かなかった。それは自分がませていて、周囲の男子が幼稚に見えるからだと勝手に結論付けていた。いずれ、私の前には心を引き付けてくれる素敵な殿方が現れるものだとばかり。だが、私の心にアンカーを打ち込んだのは素敵な殿方じゃなかった。白くて丸い可愛い女の子だったのだ。  それまでの人生で最も衝撃を受けた出来事と言って良いだろう。  そんな衝撃的一目惚れ以降の私がどうかと言えば、初めに書いたとおりである。手ごろな神社と大量の藁を持っていたとしたら、きっと迷わず夜な夜な神社に通い詰め、海咲ちゃんの取り巻き連中を呪っていた事だろう。幸いなことに、うちの近所にはそんな手ごろな神社もなく、ついでに言えば藁だって大量に手に入れられるような家庭ではなかった。仕方なくカバー付き消しゴムに緑のボールペンで海咲ちゃんの名を書き、バレぬようにせっせと使ってみたりもしたけれど、効果のほどは言わずもがな。  結局のところ、彼女を盗み見て、親し気にしている他人を自分に置き換えて妄想に耽るのが精いっぱいというわけだ。  夜な夜な巻き起こる事後の虚しさは半端じゃない。これがアイドルとかなら、そもそも触れる事すら許されぬわけだから諦めも付く。だが、海咲ちゃんは私の中で神格化しているだけでクラスメイトなのだ。私が一歩踏み出せれば、それで関係を変えることが可能な存在である。あのいけ好かないアバズレ共のように、気安く触れることだってできるはずなのだ。  つまり、私は夜な夜な自分のヘタレさ加減を確認してしまう真似をしては、自己嫌悪に陥っているわけだ。マイナス思念の自給自足。あるいはマイナス思念を生成する永久機関と言ってもいい。  不健全の見本市があれば、私は間違いなく出展することができただろう。
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