凡骨細胞共のこと

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凡骨細胞共のこと

「凄いカラフルなお弁当だね」  私は海咲ちゃんの食べているお弁当を見てそう言った。すると、海咲ちゃんは実に速やかに笑顔になってくれた。 「そう言ってくれるの嬉しい。頑張って作って来たんだぁ」 「え、これ全部? 篠崎さんが作ったの!?」 「そうだよ。前はお母さん作ってくれてたんだけど、お弁当のサイズが大きくなってきたからしんどいって言われたの。だから、じゃあ自分で作ろうかなって」  確かに、このサイズの弁当箱にカラフルなおかずを詰めようと思うと大変なことだろう。私の小さな弁当ですら、作るのが面倒だと我が母は良くぼやいている。今の話を聞かれたら、私は自分の弁当を自作しなければならなくなるので、シークレット中のシークレットとして扱っていく所存。 「凄いねぇ。どれも完璧に仕上がってるし」 「ありがとう。ねえ、良かったらどれか食べてみる?」 「え、良いの?」 「うん、もちろん」  そう言いながら、海咲ちゃんは私の前にデカい弁当箱を差し出した。さて、この中から何を取るか。かなり重要な選択肢だと、私は判断した。はっきり言って、二人の関係性の今後を占うと言っても過言ではない。 集中力、判断力、決断力の全てを動員し、この選択を成功させねばならない。  私を作る何億もの凡骨細胞共。お前たちが作り上げたこの私って奴が、いかに惨めかって事を示したくなけりゃ、全身全霊を傾けやがれ。分かったか!!
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