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友達宣言のこと
不思議な事だが、その後談笑しながら弁当をほぼ同時に食べ終えた。喋りながら食べていたのに、なんなら海咲ちゃんの方がよく喋っていたと思うのに、どうしてそんなにスピードが出せるんだろう。
食事を終えて弁当箱の蓋を閉め、一息ついたところで沈黙が訪れた。
「それで、さっき言いかけてた話なんだけど……」
海咲ちゃんが改まって私の方を向いた。何となく、海咲ちゃんの腹の方へ視線を向けていた私は、慌ててその視線を上に上げた。
「その……最近、たまに目が合うなって」
「あ、うん……」
やはり、私が海咲ちゃんを見ている事に気が付いていた。
「それでその、何となく目が合うもんだから私も気になっちゃって」
「う、うん」
何というか、とてつもなく気恥ずかしい。今すぐにでも逃げ出したいところだが、海咲ちゃんの顔も上気して真っ赤になっていた。それがあまりにも可愛すぎて、私はその場から動く気になれなかった。
「もしその、私の勘違いならゴメンね?」
「あ、ううん」
私は慌てて頭を振った。ここで言わなきゃ二度と機会が来ないかもしれない。そう思って私は腹をくくることにした。
「あ、あのっ、私ね、篠崎さんと友達になりたいなぁって」
「え、あ、うん、ありがとう。嬉しい」
友達になって欲しいってことを伝えるのが、こんなに照れくさい事だったなんて。それでも、向かい合っている海咲ちゃんの赤くなった頬を見ていると、言って良かったと思えた。
「小鳥遊さん、下の名前なんて言うんだっけ?私、海咲」
「わ、私は野乃花」
名乗り合い、そしてしばし沈黙。
「……の……野乃花ちゃん」
顔を真っ赤にして海咲ちゃんは私の名前を呼んでくれた。
「み……海咲……ちゃん」
私もたぶん真っ赤だったと思う。
それから二人で、なんか可笑しくなって笑った。笑っていたらチャイムが鳴りだして、私達はまたもや教室まで全力疾走することになってしまった。
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