友達宣言のこと

1/1
前へ
/10ページ
次へ

友達宣言のこと

 不思議な事だが、その後談笑しながら弁当をほぼ同時に食べ終えた。喋りながら食べていたのに、なんなら海咲ちゃんの方がよく喋っていたと思うのに、どうしてそんなにスピードが出せるんだろう。  食事を終えて弁当箱の蓋を閉め、一息ついたところで沈黙が訪れた。 「それで、さっき言いかけてた話なんだけど……」  海咲ちゃんが改まって私の方を向いた。何となく、海咲ちゃんの腹の方へ視線を向けていた私は、慌ててその視線を上に上げた。 「その……最近、たまに目が合うなって」 「あ、うん……」  やはり、私が海咲ちゃんを見ている事に気が付いていた。 「それでその、何となく目が合うもんだから私も気になっちゃって」 「う、うん」  何というか、とてつもなく気恥ずかしい。今すぐにでも逃げ出したいところだが、海咲ちゃんの顔も上気して真っ赤になっていた。それがあまりにも可愛すぎて、私はその場から動く気になれなかった。 「もしその、私の勘違いならゴメンね?」 「あ、ううん」  私は慌てて頭を振った。ここで言わなきゃ二度と機会が来ないかもしれない。そう思って私は腹をくくることにした。 「あ、あのっ、私ね、篠崎さんと友達になりたいなぁって」 「え、あ、うん、ありがとう。嬉しい」  友達になって欲しいってことを伝えるのが、こんなに照れくさい事だったなんて。それでも、向かい合っている海咲ちゃんの赤くなった頬を見ていると、言って良かったと思えた。 「小鳥遊さん、下の名前なんて言うんだっけ?私、海咲」 「わ、私は野乃花」  名乗り合い、そしてしばし沈黙。 「……の……野乃花ちゃん」  顔を真っ赤にして海咲ちゃんは私の名前を呼んでくれた。 「み……海咲……ちゃん」  私もたぶん真っ赤だったと思う。  それから二人で、なんか可笑しくなって笑った。笑っていたらチャイムが鳴りだして、私達はまたもや教室まで全力疾走することになってしまった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加