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ラッキースターに願いを込めて。
四角い箱に手を突っ込んで、あたしは祈るような気持ちで指を動かした。
━━━学園祭実行委員。
お堅い学校だから、模擬店もお化け屋敷も楽し気なものは全部NG。
誰も立候補しなかった末の押し付け合いの抽選会。
一年前の不運を思い出しながら、神経を集中させた指先で紙を一枚選ぶ。
(委員だけは二度と嫌っ…!!)
箱から腕を抜き、親指と人差し指と中指でしっかりと挟んだ小さな紙の存在を確認してそのまま席へと戻る。
「まだ見ないで下さいねー」
ざわついた教室に響き渡る委員長の声に従い、あたしはその紙を机の上にコロンと転がす。
やり方は簡単。
引いた紙に「★(星マーク)」が書かれていた二人が地獄の二週間を決定付けられるってシステム。
前回、あたしのくじ運が最悪だったばっかりに、『柏木台学園の歴史について』なんてつまらない展示を担任から押し付けられた。
同じく嫌々やってるのを隠しもしない男子と事務的な会話のみで乗り切ったけど、とにかくあたしの高校生活一年目の汚点だと今でも思ってる。
学園祭の内容まで調べずにこの高校を選んだあたしもあたしだけど、少しでも楽しく過ごしたい高校生活を紙切れひとつで奪われるなんてごめんだ。
「はい、じゃあ紙を開いてもいいですよー」
きれいに結ったおさげに分厚い眼鏡、短すぎず長すぎずちょうど良い膝丈のスカート。
そんな、見るからに『委員長タイプ』の佐和子がその通る声をクラス中に響かせる。
あたしは彼女から机の上に置かれた紙切れに視線を移す。
(委員になったとしても、せめてもう少しやりがいのあるテーマだったらいいのに……)
少しランクダウンさせた願いを込めて、あたしはゆっくりと紙を開き始めた。
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