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一日目
一日目
唖然。階段を駆け上がったせいで息が上がっているからではない。眼前の彼女が発した非常に異常な言葉の挑発に打ちのめされてしまったからだ。彼女の長髪が風に踊る。ぱっつんな黒髪が特徴的だ。
「どうした? 言葉巧みに説得して欲しいところなのだが……」
先ほどまでとは打って変わった不安げな表情でそんなことを言う彼女。親指の爪を噛んでいる。
「す……こし待って、くれない、ですか。少々状況を整理したいんだ」
「それならばよかろう」
今度はあふれんばかりの笑顔。ころころと子どもみたいに表情を変える人だ。
さて、思案する。まず考えるべきことは……一つ目は……。
どうしよう。
何も考えがまとまらない。
どうにも劇的すぎるこの展開に頭がついていかないようだ。決して、僕が理路整然とした思考が苦手なわけではないはずだ。
僕はため息をひとつ。そして、これからの方針を決めた。彼女にいろいろ聞いてからまた考えればいいや、と。
「幾つか質問をしてもいいかな?」
「いいだろう」
「まず、君はだれ?」
質問に失敗したかもしれない。人に名前を訊ねるときはまず自分からって礼儀があった気がする。怒られたら嫌だな。
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