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開いた両手を合わせて納得した顔をみせる。いちいち仕草がかわいらしい人だ。
「さあ質問を続けたまえ」
「そうだなあ……」
僕が知的で格好いい人間だったら、クールで意味深な質問をぶつけられるのだろう。しかし僕は、なんというか、それなりな高校生だから。普通の質問しか出来ない。
「何で僕を連れてきたの?」
彼女は爪を噛んで答える。
「理由は無いよ、たまたま目に付いたから。それだけだ」
「屋上から飛び降りるからそれを止めてくれ、だっけ。そういうのは友達に頼みなよ。ほぼ初対面の僕じゃ荷が重過ぎるから」
「……だってなぁ」
苦虫を噛み潰したような顔で言いよどむ彼女。
「私、友達いないからさ」
どうにも申し訳ない気持ちで胸が痛む。ばつが悪い。謝らずにはいられなくなる。
「それは、ええと。すみ――」
「謝らなくてかまわない」
謝罪がさえぎられる。
「理由はわかっただろう、止めてくれる人がいないんだ。でも」
「私は、助けを求めている」
悲痛に、真剣に、僕の目を見据えて。
しかし、彼女と目を合わせるとすぐに、彼女は目をそらす、目を泳がせる。
「駄目、だろうか?」
彼女の目が潤んだような気がした。
僕は、決めた。
「言ったよね、友達に頼めって」
びくりと震えた彼女が僕に背を向ける。
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