一日目

3/4
前へ
/14ページ
次へ
 開いた両手を合わせて納得した顔をみせる。いちいち仕草がかわいらしい人だ。 「さあ質問を続けたまえ」 「そうだなあ……」  僕が知的で格好いい人間だったら、クールで意味深な質問をぶつけられるのだろう。しかし僕は、なんというか、それなりな高校生だから。普通の質問しか出来ない。 「何で僕を連れてきたの?」  彼女は爪を噛んで答える。 「理由は無いよ、たまたま目に付いたから。それだけだ」 「屋上から飛び降りるからそれを止めてくれ、だっけ。そういうのは友達に頼みなよ。ほぼ初対面の僕じゃ荷が重過ぎるから」 「……だってなぁ」  苦虫を噛み潰したような顔で言いよどむ彼女。 「私、友達いないからさ」  どうにも申し訳ない気持ちで胸が痛む。ばつが悪い。謝らずにはいられなくなる。 「それは、ええと。すみ――」 「謝らなくてかまわない」  謝罪がさえぎられる。 「理由はわかっただろう、止めてくれる人がいないんだ。でも」 「私は、助けを求めている」  悲痛に、真剣に、僕の目を見据えて。  しかし、彼女と目を合わせるとすぐに、彼女は目をそらす、目を泳がせる。 「駄目、だろうか?」  彼女の目が潤んだような気がした。  僕は、決めた。 「言ったよね、友達に頼めって」  びくりと震えた彼女が僕に背を向ける。     
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加