雪乃の依頼

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雪乃の依頼

「こんにちは」 「いっ、いらっしゃいませ・・・・・・っ!!」 雪乃は後ろ手にドアを閉めると、にこりと八雲に微笑みかけた。 フレアスカートの裾をひらりと揺らし、小説が陳列されている書架へ向かう。 八雲はうるさくなる鼓動と頬に集まる熱を必死に抑えながら、その横顔を密やかに目で追った。 透明感のある、白い肌。 ダークブラウンの長く伸ばした柔らかい髪が、足取りに合わせふわふわと揺れ動く。 眉の辺りで切り揃えられた前髪は、優し気でぱっちりとした瞳をより際立たせていた。 泉雪乃はすぐ側の大学の薬学部へ通っており、この辺りではその愛らしい容姿が噂を呼び、ちょっとした有名人であった。 『クスノキ堂』を初めて訪れたのは、去年の冬。 穏やかな光に照らされて、雪がひらひらと舞い落ちる午後だった。 真っ白なコートに身を包み来店した彼女を、八雲は冗談ではなく、雪の精か何かが現れたのかと思い、一瞬にして心を奪われたのである。
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