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春は桜、夏は青葉、秋は紅葉、冬は雪。
四季の移り変わりを余すことなく、肌で感じることの出来る、北のとある街。
この街を象徴する建造物は、時代を遠く遡り、明治の時代に建てられた煉瓦造りの館である。
赤茶色をした煉瓦の壁に浅緑の屋根。
白い化粧枠に嵌め込まれた、ひずみのある窓硝子。
アメリカ風ネオ・バロック様式の、西洋を感じる堂々とした佇まいで、今も変わることなくこの街を見守っていた。
赤煉瓦の館を横切る、通称『大学通り』を歩くこと十五分。
キャンパスまでの道のりを彩る見事な銀杏並木が出迎える。
通りを吹き抜ける風が枝を飾る葉を揺らし、緑の音色を奏でてゆく。
それは学生達のお喋りにも似て、通りを賑わせていた。
「ねえ、雪乃。『クスノキ堂』って古書店知ってる?」
「うん。たまに行くよ?」
「本当?そこの楠木八雲って店主がカッコイイんだけど、ちょっと変わってるって噂」
「変わってる?そうかなぁ」
「『本屋のくせに本を売りたがらない』・・・・・・って!」
時は夏。
銀杏の葉が若く青々と成長し、北の街に短くも色濃い季節の訪れを感じさせる頃。
密やかに聴こえてくる、古書店『クスノキ堂』の何とも可笑しな風評。
その真相とは。
はてさて、頁を捲ってみようじゃないか・・・・・・ーー
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