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広大なキャンパスを横目に大学通りの外れまで来ると、どこか懐かしいレトロな店がぽつぽつと居を構えだす。
踏みしめていたアスファルトが、いつの間にか煉瓦造りの石畳に変わり、流行りのカフェは影も無く、ナポリタンが自慢の喫茶店がお目見えする。
謎の壺や掛け軸を飾る骨董品屋、学生達の腹を満たしてくれる小さな定食屋が並ぶその奥に、ひっそりと佇む小さな店がある。
そこが、噂の古書店『クスノキ堂』であった。
ところどころ欠けている赤茶色の煉瓦の壁を縫うように、蔦が這い登っている。
店の壁から突き出すように取り付けられた青銅色のロートアイアン。
そこには『クスノキ堂』の文字と本をモチーフにした細工が施されている。
アンティークなその鉄看板が店舗の目印だ。
小窓がついた白い木製ドア。
くすみがかった金属の丸いノブは、空回りしそうに緩んでいる。
窓を覗くと、広いとは言い難い店内は書架が占拠し、見慣れない装丁の古書が綺麗に並べられていた。
収まり切らず、奥のカウンターを囲むように積み上げられた分厚い本。
一冊手に取り表紙を捲れば、滲んだインクと藁半紙にも似た紙の匂いが、古き良き時代へと誘ってくれる。
さて。
どうやら客がひとり、噂の主と何事か話しているようなのだが・・・・・・?
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