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宿る魂、変わる心
彼らと対話し、八雲が知り得たこと。
『クスノキ堂』で言葉を発する本は三冊。
物に魂が宿るといえば、室町時代の『付喪神(つくもがみ)絵巻物』が頭をよぎる。
長い年月を経た道具などに神や精霊が宿るという物語だ。
彼らもその類なのかもしれないが、古書というなら、もっと古い年代の物は沢山ある。
どうやら古ければ魂が宿るという訳でもないらしい。
これは八雲の仮説だが、年月とともに、著者や読者、持ち主の愛着の強さが、彼らを宿らせたのではないのだろうか。
そして三冊三様に、声質も性格もまるで違う。
ひょっとすると著者や持ち主達の人となりを反映しているのかもしれない。
八雲は三冊に呼び名をつけることにした。
といっても、取り立てて思い浮かばなかったので、著者名で呼ぶことに決めたのだった。
彼らとの触れ合いは、八雲を少しづつ変えてゆく。
本は生きている。
例え今は話せなくとも、もしも魂が宿った時にぼろぼろなのでは、あんまりだ。
管理の方法、扱い方。
大切にしてくれるように伝えなければ。
心踊る物語、その世界に浸り共感し流す涙。
重厚な一冊に詰まった奥深い知識。
次頁を捲る、胸の高鳴り。
純粋に本を楽しみ愛していた八雲の心から、そんな感情が消えていった。
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