罪と罰ショウ

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 すべての指を切り終えると、男は血のついた枝切りバサミを机の上に投げ捨てた。それから鍵山えり奈の髪の毛を掴んで、その顔にガスマスクを近づけた。まだ彼女は意識を失っていなかった。身体の力は抜けて、焦点の合っていない目は血が流れ落ちる指先に向けられている。  それを確認すると、男は再びタブレット端末を手に取った。そしてまた指先で操作しながら、機械じみた声で言ったのだ。 「ふたつめの罪……」  その言葉を聞いた鍵山えり奈の目に、光が戻った。だが、それは恐怖を示す光だった。体を震わせながら、左右に小さく頭を振っている。 「鍵山えり奈は視力も悪くないのに、コンタクトレンズをつけている。黒目を大きく見せるための、ファッション的なコンタクトレンズだ。報道部のアナウンサーでありながら、だ。原稿の読み間違いが多く、気の利いたコメントも言えないくせに、女の部分だけを売りにしてニュース番組の最前線にいるのは許せない」  そこまで読むと、男はまたビデオカメラに向かって大袈裟に両手を広げる。 「この罪にも、罰を与えなければいけない」
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