罪と罰ショウ

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 次に男が机から手に取ったのは、さっきの枝切りバサミと銀色のスプーンだった。男は人差し指と親指で、鍵山えり奈の左目の瞼を大きく開いた。さっきまで意識を失いかけていた彼女は、不規則な荒い息をしながら呻き声を上げた。瞼を押さえられていない右目も、大きく見開かれている。  男はためらうことなく、左目の眼球に沿って目の奥へとスプーンを刺し込んだ。  悲鳴を上げる鍵山えり奈の姿を、ビデオカメラのレンズが捉えている。その先にいる視聴者たちは、どんな思いでこのショウを見ているのだろう。ただ彼らの数は、今や膨大に膨れ上がっている。  男は彼女の眼球をすくって、落ちないように手前に取り出した。そして眼球から伸びている視神経を、丁寧に枝切りバサミで切り取った。それから男は左目の眼球が乗ったスプーンを鍵山えり奈の右目の前に持っていき、そこでガスマスクを少しずらした。男の口元が露わになる。彼女の右目は、自分の眼球の先で興奮したように笑っている男の口元を捉えていた。 「――――っ!」  次の瞬間、男はそのスプーンを自らの口へ運んだのだ。鍵山えり奈の眼球をほおばると、男は満足そうに笑い、その口元を再びガスマスクの奥へ隠した。鍵山えり奈の右目から、悲しみとも恐怖ともとれる涙が流れ落ちた。
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