罪と罰ショウ

13/14
38人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
 翌日の青空テレビ局のニュース番組ではメインキャスターの五百蔵秀介が、神妙な顔でその日のトップニュースを読んだ。それは、いつも番組で隣の席に座っているアナウンサーの鍵山えり奈が、遺体となって郊外の河川敷で発見されたという内容だった。  両目をくり抜かれ、両手の指をすべて切断されていたという具体的な事実は、テレビでは伏せられた。昨日配信されたインターネット動画も具体的な内容は極力抑えられ、動画に映っている男が犯人だとして警察が捜査している、とだけ伝えた。  テーブルの一番端に座っている芸能ニュース担当の新人女子アナウンサーは、ハンカチで目頭を押さえすすり泣いている。五百蔵秀介はニュースの最後にカメラをじっと見つめて「一刻も早く、犯人が捕まることを願います」と締めくくった。  番組はニュースから天気予報のコーナーに移り、別のスタジオに映像が切り換えられた。五百蔵秀介は束の間の緊張から解き放たれ、ペットボトルの水を口にした。ふと見ると、さっきまで泣いていたはずの新人女子アナウンサーは、もうスタッフと談笑している。  五百蔵秀介は、テーブルに置かれたニュース原稿の隣にあるタブレット端末を操作した。そして青空テレビ局の実況掲示板を開くと、そこに書かれたコメントを読んだ。 『鍵山えり奈が殺されたなんて、ショックすぎる』 『鍵山えり奈じゃなくて五百蔵が殺されたほうがよかったんじゃね?』 『五百蔵秀介が出てるだけでチャンネル変えたくなる』  そこには、五百蔵秀介に対する辛辣なコメントが並んでいた。いつもそうだ。この番組の視聴率がいいのは、鍵山えり奈の人気によるものだったのだ。  五百蔵秀介が指を動かしてタブレット端末の画面をスクロールさせても、そこに書かれているのは「昨日とは正反対の」コメントばかりだった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!