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気がつくと、彼女は見知らぬ場所にいた。見知らぬ場所の見知らぬ椅子に座って、気を失っていたのだ。否、正確に言うと、誰かが気を失った彼女をこの場所まで運び、椅子に座らせた。そして、彼女の意識が戻るまで放置したのだった。
彼女の目に見えている光景は、四方を取り囲むコンクリートの壁だった。部屋にしては広すぎる。そこは、どこかの倉庫のようにも思えた。天井は高く、窓はひとつもない。天井から垂れ下がった一本のコードの先についた裸電球が、心細い光を放っているだけだった。
後方を確認するために振り向こうとして、彼女は初めて自分の頭が椅子の背もたれに固定されていることに気づいた。背もたれから伸びた紐か何かで、正面を向いたまま固定された頭は、少しも動かすことができない。
頭だけじゃない。動かそうとした腕も、ひじ掛けの上に置かれた手首も、太腿と足首、それに胴体まで……、身体のいたるところが椅子に固定されている。そのうえ口に粘着テープを貼られ、声を上げることもできない。
その瞬間、彼女を激しい恐怖が襲った。自分がなぜこんな場所にいて、椅子に身体を固定されているのか。誰がこんなことをしたのか。そして、これから何をされるのか。そんな恐怖が、大きな波のように、一瞬で彼女を飲み込んだ。
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