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目玉だけを動かして、室内の様子を探る。見える範囲には、何も物が置かれていなかった。ただひとつ、彼女の正面にある「ビデオカメラ」を除いては。
彼女から少し離れたところに三脚が据えられ、その上に家庭用のビデオカメラがセットされている。そのレンズは彼女の全身を捉え、小さな赤いランプが点灯していることから、カメラが録画状態だということがわかる。
意識が戻る前から、そのカメラは彼女のことを撮り続けていたのだ。
誰が? 何のために?
彼女は確かに恐怖を感じながらも、頭の片隅には別の考えが浮かんでいた。もしかすると、これは「悪戯」なのではないだろうか……。それは、彼女の職業によるものだった。職業柄、ついそう考えてしまったのだ。
だが、もしその考えが正しいのだとしたら、あまりにも趣味の悪い悪戯であることに違いなかった。そしてそのとき急に頭の中に蘇った記憶から、彼女はその考えが間違っていることを知るのだった。
昨日の夜――今もまだ夜なのか、朝になっているのかはわからないが――仕事を終えた彼女がマンションに帰って部屋のドアを開けたとき、何者かに背後から首に何かを押し当てられた。その直後、激しい痛みに襲われた彼女は気を失ったのだ。
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