罪と罰ショウ

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 まるでそこに大勢の観客がいるかのように、男は大袈裟に手を広げて叫んだ。 「今日の罪人は、青空テレビ局のアナウンサー、鍵山えり奈!」  罪人って何!? 私は、何の罪も犯してない!  彼女が叫ぼうとした声は、粘着テープに塞がれた口の奥で消えてしまった。  ゲストを迎えるみたいに拍手をしながら、男は鍵山えり奈に近づいて行く。手を叩く乾いた音が、コンクリートに反響する。彼女は身を捩って逃げ出そうとしたが、コンクリートの床に固定されているのか椅子は微動だにしない。  男は鍵山えり奈の隣に立つと、その顔にガスマスクを近づけた。耳元で男の息遣いが聞こえる。これから何が行われるのか、予想もできなかった。だがそれが殊更に、彼女の恐怖を増幅させた。 「それでは、視聴者の方から申告された彼女の罪を見てみましょう」  機械じみた声でそう言うと、男は鍵山えり奈の背後に手を伸ばし何かを取ろうとした。ファスナーが開く音や、物がぶつかる音がする。どうやら背後には机か何かが置かれ、その上に物が並べられているようだった。
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