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「それでは、罰の執行の時間だ!」
男はワイシャツの袖をまくり、ポケットから取り出したビニール手袋を両手にはめた。鍵山えり奈は息を荒げて身を捩り何とか逃げようとするが、きつく固定された身体は動かない。
一度、男の姿は鍵山えり奈の背後に消え、次に現れたときその右手にはハサミが握られていた。木の枝を切れる、鉄製の枝切りバサミだ。そのハサミの刃を、男は彼女の目の前で二、三度開いたり閉じたりして見せた。鋭い刃先がこすれ合う音が耳に届く。これなら、多少の固いものでもすんなりと切断できそうだった。
男は次にビデオカメラのほうに向いて、さっきと同じようにハサミを動かして見せた。レンズの先にいる、たくさんの観客に向けて。机の上に置いたタブレット端末に表示された視聴者の数は、すごい勢いで増えている。視聴者たちは、これから行われる罰の執行を固唾をのんで見守っているのだ。
「お前は、罰を受けるのだ」
そう言うと、男はハサミの刃先を鍵山えり奈の指先へと向けた。そして固定された彼女の指の中から、最初に選んだのは左手の小指だった。小指の第一関節あたりを、二枚の刃で挟む。鍵山えり奈は全身に力を入れ、何かを呻いている。大きく見開かれた眼は、ネイルされた自分の指に向けられている。
男は何の前触れもなく、枝切りバサミのグリップを握った。
バチン! という音が響いて、コンクリートの床に小さな指先が転がった。切断された指から、細く血が噴き出した。
「――――っ!」
鍵山えり奈は、声にならない悲鳴を上げた。その身体は小刻みに震えている。
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