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ルナの血は闇を統べる主、グレイにしか馴染まない。
それは一体何故なのか……
主の贄であるルナに手を出し、そしてその贄の血で自ら身を滅ぼした。
リドリーのことは誰が語らずとも吸血種族達の全域に広まっている。
それを知っていて態々手を出すほど愚かではない。
闇の力を増す魅惑的な究極の贄の血。
たとえ微々たる量だったとしても、一度知ってしまったリドリーは逆に気の毒だったと言えよう。
その血の味に捕らわれたのだから…
グレイはその気はないことを口にするレオンを一瞥するとルナを見た。
何故か自分とは視線を合わせない。後ろで手を組んだまま、ルナは下を向く。
その頬は微かに染まっていた。
もしやレオンに口説かれたのではなかろうか。
そつなく何でもさらりとこなす。城にいる他の者達と比べるとレオンは一番侮れない。
グレイの胸中で色んな思惑が絡み合う。
無表情でありながらそんな気持ちを目に浮かべ、悶々とした視線を向ける自分達の主にレオンとモーリスは密かに目配せし合っていた。
明らかに妬いている──
それはルナも気付く程にだ。
レオンは肩を竦め、機嫌を取るように軽く笑って見せた。
「私はリドリーとは違いますよ」
「なら何しにきたのか言え」
「………」
直ぐに返されてレオンは思わず口を閉ざした。
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