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モーリスはやっぱりそんなグレイをホホッと笑う。
「少し特種で御座いますか……」
意味ありげな空気を含んだ言葉が返された。
グレイは小さく呟いて笑うモーリスを白い目で見つめる。
最近何かと意見をすることが多くなった主従。
従順は求めてはいなかったがそれにしても、ここ最近やたらと説教が過ぎる──
だがついそれに耳を傾ける自分がいた。
従順ではない主従は水を巻きながら口を開いた。
「旦那様は恋を始めたばかりですからな…」
「………」
「そして、その相手も純粋を絵に描いたような初な女性──…」
「………」
「それは中々、思うようにはいきませんな……」
「……何が言いたい」
モーリスはゆっくりと語りながらふっと目尻を緩める。
「旦那様もルナ様も、こと、恋愛に関してはまだまだ未熟で御座います」
「………」
「旦那様が今まで相手にされてきた女性は恋愛を経験した上で、遊びをたしなもうというご婦人ばかり。そりゃあ、そんな方々とルナ様とを同じ扱いでは上手くはいきませんでしょう……」
「………」
「人間の初めての恋には順序が御座いますから……」
「あれはもう人間では…」
「心は人のままで御座います……」
「………」
「言ってしまうと人よりも心は清い。だから旦那様に濁りのない力の源を与えられることができる。旦那様はそんなルナ様を選ばれた……おわかりで御座いますかな」
「───…」
「優しさにも加減が要るものです……そう、むやみやたらに甘くされても返って恋愛に慣れていらっしゃらないルナ様は戸惑われてしまいます…」
「……っ…」
優しい口調ではあるが何故か少々耳が痛い。
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