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的を射たモーリスの言葉にグレイは顔を逸らしていた。
「こういう時こそ、リドリーに学んで置かれたら宜しかったですね、旦那様。リドリーはルナ様の相手を上手く…」
「──…っ…あいつの名を口にするなっ」
嫌味を含んだように笑うモーリスにグレイはそう怒鳴り返していた。
冷静で感情の波一つも揺らさない。出会った頃のそんな闇の主が懐かしくもある。
モーリスはムキになるグレイを恐ろしいと思う所か可愛いとさえ思ってしまう。
なんとも初な御夫婦で御座いますな……
モーリスは思わずまた、ホホッと笑みを浮かべた。
「いい機会で御座います」
「……っ？…」
「旦那様はこの期に恋を学んで見られるとよい」
「……な」
「ルナ様とゆっくり……」
「………」
「……学びながら恋を愛へと育てていってみられるとよいでしょう……」
「──……」
「そこに居られるとズボンの裾が濡れてしまいますよ旦那様」
モーリスはその場に立ちすくむグレイを追い払うようにジョウロの先を振って水を撒く。
「お前にルナの居場所を聞いたのが間違いだな！…ヴコに捜させる。先にそうすべきだったっ」
まるで主人を気遣う素振りではない。グレイはそんなモーリスにまた強く舌を打って背を向けた。
モーリスは頭から湯気を立てる勢いのグレイの後ろ姿を見えなくなるまで見送る。
「ルナ様……もう出てこられて宜しいと思いますよ」
そう植え込みの奥に声を掛けていた。
モーリスの呼び掛けにガサガサと植物が揺れる。
「はあ…っ…ありがとうモーリスっ」
そこから這って姿を覗かせたルナは小枝で切った掠り傷の顔を向けながらモーリスに礼を言った。
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