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まもなく、真の携帯電話が鳴り響いた。
目を覚ますと、弘の姿はなかった。
帰ったのか。
結局挨拶もできないまま、眠りに落ちてしまった。
恥ずかしさに、顔が熱くなる。
振える電話の応答ボタンを押した。
「はい。片岡です。」
『片岡様。こちらは夢見荘でございます。本日はご利用ありがとうございました。
何か気になる所などございましたか。』
「ありがとうございました。田中さんに…"ごめんなさい"って、伝えてください。」
『かしこまりました。またのご利用を、お待ちしております。ありがとうございました。』
電話はいつもの通り、
無機質なやり取りで終わった。
ベッドサイドのテーブルに目をやると、
鞄にしまったはずの入館証が置かれていた。
まさか。
慌ててテーブルに駆け寄ったが、
中身は無事だった。
ケースの上に、付箋が貼られていた。
"お風呂、沸かしてあるよ。またね"
「…見かけによらず、可愛い字を書くんだな。」
真は丸々とした弘の字に目を細めながら、
浴室へと向かった。
おわり
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