誰かの知らない、誰か

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アルバートホテル、7階。 やはり金曜日の、20時。 真はベッドの淵に座って、じっとその時を待っていた。 何をやってるんだろう。 別にセックスがしたかったわけじゃない。 ただ、弘に会いたかった。 会ったからって、話すことも何も決まってない。 ただ、顔を見たかった。 金を払ってまで、「夜の男」に会おうとする。 こうすることでしか、弘に会うことは出来ないから。 本当に、何をやってるんだか。 自分の不可解な行動に呆れながら、真はシャツの腕をまくって軽く伸びをした。 部屋の扉を叩く音が聞こえる。 ゆっくりとドアノブを引くと、 あの少し落ち着いた優しい声が真を包み込んだ。 「…久しぶり。」 扉の向こうから嬉しそうに覗き込む弘の笑顔は、3ヶ月前と変わっていなかった。 真は扉を開け、「夜の世界」を纏う男を部屋に招き入れた。
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