記念日

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「まこは、俺に会いにきてくれてる?」 真は小さく頷いた。 「さっきのマッサージは、気持ちよかった?」 また小さく 頷く。 「 俺のこと、好き?」 ほの暗いベッドライトに照らされた、 優しい笑顔。 背中を静かに撫でてくれるその暖かくて大きな手。 全てが嘘か誠か。 確かめるすべはどこにもない。 真は様子を伺う弘の目をただじっと見つめていた。 時折瞬きをすると、黒い睫毛がゆっくりと重なり合う。 「…やっぱり良いね、その猫目。」 自分の姿が、弘の透き通った薄茶色の瞳に 映し出されている。 疑うような、それでも信じたくなるような かみ合わない顔つきを弘に晒しているのかと思うと、 恥ずかしくなる。 「俺はまこのこと、好き」 「…なんで…」 「なんでって言われても…好きなものは好きだから」 ただの客でしかないのだ。 2人の世界は、部屋の扉が開けば終わる。 つかの間の快楽に身を捧げきれるほど 時間に酔いしれることは出来ない。 「 何を考えてるの。」 「…なにも」 きっと、見透かされているのだろう。 置き場のない視線を泳がせているこの顔を見て、 弘は何を思うのだろう。 考えると、恥ずかしくなる。 「脚のマッサージは…」 「だめ」 「もう。ケチ。ケチんぼ。」 ケチでも何でも良い。 足の付け根に当たる弘の腰元が気になって落ち着かない。 包み隠さない弘の思いに戸惑いながら、 もう一度静かに唇を重ねた。 「…まこは積極的なのか、そうじゃないのか、分からないね」 「…5回目、記念だから」 弘は嬉しそうに目を細めた。
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