記念日-次の週-

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「気を遣わせちゃったかな、と思って。」 弘の問いかけに少し俯いた後、 真はベッドに膝を乗せて弘の隣に寝転がった。 少しだけ弘の顔を見てすぐに、天井に顔を向けた。 両腕で、目元を覆いながら。 「…5回目記念って言ってたから…何か、感謝の気持ちを 伝えようと思ったんだ」 「すごい感謝の気持ちだ」 弘は表情を覆う真の腕をゆっくりと引き剥がした。 「ありがとう。来てくれるだけで、十分嬉しい」 丸くて温かい、弘の言葉。 真はそれを受け止めるのにそうっと、両手を広げる。 「いつも…ありがとう」 「こちらこそ」 綻んでいく猫目を見届けて、弘は身体を起こした。 真も慌ててそれに続く。 猫目は一瞬の内に鋭さを取り戻した。 ベッドの上で向かい合ってすぐに、真は視線を逸らした。 薄いブルーのシャツから覗く弘の白い身体が あまりにも生々しく、猛々しい。 弘は身体を近づけると真の手を取って、自分のベルトに指を掛けさせた。 真は震える指で弘のベルトのバックルを傾ける。 ゆっくりとした動き。 その時を待ちながら、弘は真の頭に顔を埋めた。 「良い香り」 「さっき…ちょっと、汗かいた…」 「そう?気にならないけど」 ふふふと笑う弘の鼻息が髪にかかるのがこそばゆい。 肩をすくめながらも、ようやくベルトを外し終えた。 形づいた弘の腰元に手を導かれる。 真は促されるままに、弘の肌に手を滑らせた。 おずおずと指を絡めていると、身体ごと引き寄せられる。 近すぎる距離が、真の身体を硬直させた。 弘はただ黙って真の指先を見つめている。 伏せられた薄茶色の睫毛が、真の顔のすぐ目の前で折り重なる。 「何か…しゃべって」 「頑張ってるまこの勇姿を、目に焼き付けておこうと思って」 「やめろよ…気まずい」 小さく笑う弘の頬は、少し桃色に色づいていた。 色素の薄い白肌は、熱を持つと目で見て分かるほど、色づく。 弘の身体が熱を持ち始めていることが伺えた。
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