誰かの知らない、誰か

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「まこ…彼女出来た?」 ベッドの上でうつ伏せでぐったりと倒れている真の顔を、 弘が上から乗りかかって覗いてきた。 「う…重い。」 真は身体を仰向けに反転させ、身体を密着させようとする弘を腕で押しのけた。 「…良い眺め。」 真の身体の上で四つん這いになった弘は、 真の汗の浮いた薄い腹筋が呼吸で上下するさまを舐めるように見ては、 嬉しそうに鼻を鳴らした。 すぐまた身体を寄せようとして来るので今度は暑い、と肘で軽く押しのけた。 弘は意地悪、と小さく頬を膨らませて、真の横に寝そべった。 「…2週間前に別れた。」 「そっか。」 「何で分かったの。」 「何となく、”男”の顔になってたから。」 3ヶ月の内に、弘から見た自分の顔つきは変わってしまったんだろうか。 優しい笑顔。 熱さに曇る顔。 果てる時の、あの喉を鳴らす艶めかしい声。 弘は前に会った時と、何一つ変わっていなかった。 ただ、馴染のない香りを身に纏っていること以外は。
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