誰かの知らない、誰か

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「俺の顔…前と変わった?」 真は横で寝そべる弘の方に顔を向け、絞り出すような声で問いかけた。 弘が部屋に入ってきてすぐに2回程身体を重ねた。 久々だったのもあって、想像以上に疲労が溜まり、暫くはうつ伏せになったまま動けなかった。 身体は、受け入れる感覚を忘れていなかった。 「同じだよ。猫目がキュッとしてて。好き。」 「顔の作りの話じゃなくて…」 さっき言われた、”男の顔”の話がしたかった。 弘の目に自分がどういう風に映っているのかが知りたかった。 弘は目を細めると、真の吊り上ったまなじりを人差し指の関節でさすった。 「…前に会ったときよりも、悩んでるみたいに見える。」 「……」 「俺と寝てから、もっと悩むようになっちゃった?」 返す言葉が見つからなかった。 自分の視野を広げる為にきたこの場所で、 却って視野を狭めてしまったように思える。 弘みたいな男が来るとは、予想していなかったからだ。 無条件に愛されるべきこの場所で、愛することの大切さを教えられるとは 思わなかった。 それが”夜の男”の常套句だとしても、腑に落ちてしまってはもう、 気持ちに抗うことは出来ない。
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