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そんな日があっても
アルバートホテル 7階
金曜日 20:00
同じ時間、同じ場所で
"その世界"は始まる。
弘はいつものように部屋の扉をノックしたが、応答がない。
ドアノブに手を掛けると、鍵が開いていることに気づいた。
扉をそっと開けて、部屋の中を覗き込む。
「おまたせ。まこ?」
部屋の中央にある大きなベッド。
その上で、うつ伏せになった真の姿があった。
鞄とジャケットは床に放り出され、
着ていたシャツとスラックスはしわになっている。
どうやら眠っているようだ。
(疲れてるのかな。)
弘は目を細めて、真の顔を覗き込んだ。
無防備に枕に顔を埋めるその姿は、子猫のようだ。
律儀に靴下も脱いでいる。
「ふふふ。そこは脱ぐんだ。」
荷物と手に持っていたジャケットをベッド横のソファに置いて
靴下を脱ぎ、ベッドに上がった。
備え付けの電話に手を掛ける。
「あ、もしもし、ブランケットを一枚…」
***
不思議と身体が温かい。
ホテルに着いてすぐにベッドに飛び込んだことまでは覚えている。
度重なる社内ミーティングで、へとへとだった。
時間通りに、行かないと。
その一心でホテルの部屋まで辿り着いたものの、
そこで力尽きた。
うっすらと目を開けると、
すぐにこの温かさの正体が分かった。
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