4人が本棚に入れています
本棚に追加
国立国会図書館所属、特殊国家公務員"書籍鑑定士"というのが、恵那の肩書だ。古今東西の古文書、書籍を鑑定し書籍や文書の真贋と価値を推し測るのが主な仕事になる。
恵那の祖父、条太郎も元書籍鑑定士だった。つまり縁故採用であるのだが、幼い頃から条太郎に鍛えられた恵那の実力は本物であり、歴代の館長は敬意を払って恵那達の一族には接してくれている。
実際、国立国会図書館は政治家との関係は深く、彼らの要請で政策書類の資料作成に当たる事もしばしばあった。
そういうコネクションを利用して地方の旧家から、お宝ともいえる古文書や古書を仕入れるルートも確保していた。もっともほとんどが依頼人からみれば廃棄物同然の扱いで二束三文で譲り受ける事が多いが……。
「本当に現代人はモノを大切にしないわね……」
恵那はプリントアウトされた書類に目を通しながら、東海地方のとある旧家から譲り受けた書簡や古書のチェックをしていた。そして、祖父、条太郎が購入した得体の知れない古書が傍らに置いてある。
旧家の品物を一通り検分しホッとした恵那に条太郎がコーヒーを差し出す。彼が自分でブレンドし焙煎したスペシャルブレンドコーヒーだ、そのコーヒーの香りに恵那は目を細める。
「あっ、おじいちゃん、ありがとーぅ」
「ほれ、コレも食え」
条太郎が差し出したのは、品川の老舗和菓子が作ったどら焼き、三笠とも呼ばれる、某ネコ型ロボットの大好物でもあるモノだ。
最初のコメントを投稿しよう!