一、二回目のプロポーズは、強制でした。

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「鯉、見つけられました?」 「え、や、話しこんでたから忘れてたわ」 すまん、と謝ると、何故か嬉しそうに首を横に振った。 「良いんです。あの鯉はきっと俺たちのキューピットなんですよ。鯉だけに」 「……う、うん」 一人でハイテンションなあっくんには悪いが、どんな表情をするべきか分からない。 「では、旦那さま。私はここで失礼いたしますね」 「辰崎さん、ありがとうございました。また何かあれば呼びますので」 「勿論でございます」 帰ってしまうと分かると、少し残念だ。 竜宮家と婚姻となれば、辰崎さんレベルの執事を沢山囲えると思ったのに。 「では、和葉さん、僭越ながら抱き抱えても宜しいでしょうか」 「本当にするのか?」 「もちろんです。もう夫婦でしょ?」 その言葉に、何と言い返していいのか分からず戸惑う。 ……昨夜から風呂さえ入ってない、よれよれのシャツの30歳のおっさんなんだけど、それでもきっとあっくんは良いと言うんだろう。 その気持ちにはまだ追いつけてないけれど、けれど理解してあげたい。 「じゃ、頼むよ」
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