二、まるでお飯事だと人は言う

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あまりにあっくんが俺に優しいから勘違いしそうになった。 高校の時のいざこざを思い出してちょっと悲しくなる。 あの時、誰が味方で誰が敵で、どんな性癖があるのかまだ知らなかった子供の俺。 まんまと騙されて、停学させられてさ。 たった三日だけの停学だったんだけど、三日でも俺が悪いって決めつけられて科せられた罰みたいで空しくなったっけ。 覚えたての煙草を口に咥えて、苦いとか煙が目に染みるとか、思いつつ、すべて投げ出して学校なんてやめて引きこもって一日中エロいことだけ考えて生きていきたい。 そう現実逃避していた。 あの日。 やさぐれてネガティブな思考に陥った中、夕日に染まる紫のランドセルが印象強く思い出される。 俺を見るまっすぐな瞳。 人生なんてこんなもんかとあきらめていた俺の前に、可能性をいっぱい秘めた無邪気で純粋でまっすぐなあっくん。 ……10年たった今、彼に俺の運命が委ねられるのならそれは仕方がないのかもしれない。 怠けてエロい小説ばかり書いていた俺が、警察官に逮捕されるのも、罰として出荷されるのも悪くない。 だって世界は公平ではないのだから。 「ご飯食べて、寝よう」 ちくちく痛む胸がどうか、臓器に傷をつけませんように。
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