四、家探索

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Side:乙宮 和葉 朝起きると、テーブルに携帯電話が置いてあった。 俺専用らしい。 なぜか携帯があるのに、横でメモが置いてあって『緊急の用事ででかけます。和葉さん専用です。電話しますね。あと、家は好きに歩き回って構いません。ほしいものがあれば辰崎さんが9時に来ますので言ってください』と、細かい字で丁寧に書かれていた。 辰崎さんをわざわざ呼ぶ理由は何だろう。監視なんだろうか。 今日は先月書いた小説の挿絵やゲラが届くはず。それを見てひとりで興奮する予定だったんだけど、贈呈のカウントダウンの前ではそんな気持ちになれずにいた。 家の中を探索か。そういえば一応簡単には説明をうけたけど、広すぎて覚えていない。 衣装部屋は確認したいし、客間なのにモノがあふれかえっているあの部屋もどうにかしたい。 客を呼びたくないというあっくんの意図が透けて見えるし。 「おはようございます。和葉さん、起きておりますか」 玄関の方から声がして、俺は浴衣のまま出迎える。 昨日と同じ格好なのは、あの辰崎さんの前では恥ずかしい。 「お、おはようございます」 おずおず声をかけると、辰崎さんは深々と頭を下げてくれた。 「旦那様が朝ごはんの準備ができなかったとおっしゃってたので、こちら」 もしかして今度こそ辰崎さんの手作りのお弁当か。あの引き締まった筋肉の腕で、オニギリを握ってくれたのかな。 「こちら、ホテル・ニュークラウンプリンセスのサンドイッチでございます」
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