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episode1 いきなりプロポーズ!?
──ジリリリリリッ。
けたたましいアラームの音に、私の意識は急速に浮上する。
「んっ……ん~っ」
手探りでスマホを探し、アラームを止めた。カーテンから差し込む眩しい光に誘われて瞼を持ち上げる。
「ふわぁ……っ」
大きなあくびをしつつ、ベッドから体を起こした。スマホのディスプレイを確認すると、午前七時ジャスト。
抜けきらない眠気にぼんやりしながらも、私は立ち上がった。壁のフックにかかっている制服を手に取り、のろのろと袖を通す。
四月半ば、やってきた始まりの季節。私──野木 花音(のぎ かのん)はこの春、高校三年生になった。
赤いリボンをつけ、ワイシャツの上から紺のブレザーを羽織る。紺地に赤いチェック柄が入ったスカートは膝上までまくり、鏡台の前に立った。
「私の髪ってこう、なんであっちこっちに跳ねちゃうかな」
肩まであるベージュの色の髪は一切染めていない。この尋常じゃない色素の薄さと癖っ毛はお母さん譲りだ。
必死に寝癖をブラシで寝かせて、私はようやくひとつ頷く。
「うん、ばっちり」
ブラシを置いて、次に向かったのは窓際の鉢植えのところ。
「おはよう、『セントポーリア』さん」
花びらに人差し指で優しく触れる。
セントポーリアは年中室内で育てられて、水やりも週に一回たっぷりあげるだけで育つから、すごく育てやすい花なんだ。
青と紫が混じった幻想的な色がまた、目の保養にもなっている。
家が花屋だからというのもあるけれど、私は花が好きだ。
両親もお互いに大の花好きで、結婚を機に花屋を始めたほど。
そんなふたりの影響をもろに受けた私は、学校へ行っても遊びに出掛けても、『あぁ、今日は綺麗な花が咲いてたな』『今度、名前を調べてみよう』とか、考えるのはいつも花のこと。
だから注意散漫になることが多くて、よくぼーっとしすぎって家族や友達から注意されるんだよね。
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