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第一章 上京 1
「いや~良かったよ。おめでとう。素晴らしい演奏会やったで」クラブのOBの皆さんや観客の皆さんが口をそろえてそう言いながら、ロビーにいる僕たちに声をかけてくれた。昭和57年3月21日、新宮高校吹奏楽部第1回定期演奏会。場所は新宮市民会館大ホール。今その歴史的定期演奏会が終了したところだ。僕の名前は吉村剛(よしむら たけし、昔からタケちゃんと呼ばれていた)。公立の新宮高校をこの3月の初めに無事卒業したところだ。高校の時の3年間は、中学からの親友の吉中功(いさお君と呼んでいた)が、「ブラバンに興味あるからいっしょに見学に行こう」との悪の言葉にだまされ、2人共その日に入部してしまい、いさお君は、かっこええサックス、僕は分けわからんユーフォニウムというピンクレディの歌みたいな楽器をうけもち3年間風の日も嵐の日も部活の拠点であった生徒ホールに通い続けた。その仲間に、大川賢一がいた。(幼稚園からの親友でピアノの名手、のちに勝浦のモーツアルトと呼ばれるようになる。通称けんたん。)けんたんが、僕らが2年の2学期の時上級生がクラブ卒業し
部長なった。けんたんは、いつもクラブに新しい風を。今までにないものを。と言っており、定期演奏会をやろうじゃないかと皆と顧問の先生に提案し皆の賛成を得た。しかしすべて初めてであり、すべて手作りの定演会。チケットも手作り。手売り。会場もなんとか新宮市民会館を抑えて、なんと僕らが卒業式を終えた3月開催となったのである。演奏のうまさも今でこそ金賞を取るくらいの実力だがその当時はB部門の銅賞、つまり県内で一番下手だった。
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