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第一章 上京 2
定期演奏会から遡ること約2か月の2月上旬、僕は東京の大学の受験のため一人で高校のクラブの先輩の元である東京目黒に勝浦から夜行列車に乗って向かった。東京へは、中学の修学旅行以来、もちろん一人で行くのは初めてである。勝浦駅発東京駅着なので、その到着ホームには先輩の坂上さんが待っていてくれることになっていた。出かける前にも確認の電話をしていて、僕も安心して列車に乗り込んだ。予定通り列車は寒い2月の東京駅に着き約2週間先輩のアパートにお世話になった。その当時今のファストフードがはやり始めた時で、吉野家やマクドナルドも登場した頃だった。目黒駅前には吉野屋があり、僕らは朝飯にそこに入った。初めて食べる牛丼。僕はこの世の中にこんなうまいもんがあるのかと驚き、それからの2週間、3食全部牛丼、受験の日は、牛丼弁当の大盛りを持って行った。受験は4校受けたが全滅。しかし長男で家の仕事を継ぐため経営や会計を学びたかったのでちょうど不合格が分かった時に届いた中野の会計のN簿記学校の会計学科へ行くことにした。大阪や名古屋に興味なかった。俺は東京へ行くと決めていた。そして今度は母親といっしょに2月の終わりごろ夜行列車で東京の中野に向かい、その翌日に中野のアパートを決め最終の列車で勝浦に戻った。それがこの小説の舞台となる坂本荘である。そして3月の初めに高校の廊下で西村正和に会った。僕らの学年は、11クラスあり1組から7組まで文化系、8組から10組まで文理系、11組は理数系、そして建築科と土木科が別にあったので、2組の僕と7組の西村とは、教室が離れていたのでめったに会わなかった。「よう、吉村元気か大学きまったんか。俺は東京の日芸へ行くことになって、豊島区の東長崎いうとこへアパート借りて住むようになったんや。」と西村から声かけてきた。「ほんまか、俺は大学あかなんで、東京の中野の会計の専門学校へいくんや。同じ東京やね。あとで俺の住所と電話番号教室まで持っていくわ。
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