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「そうだなー。莉紗ちゃん、俺のこと大好きだからなー」
茶化した悠斗の台詞に、私はみぞおちに一発入れる。悠斗が一瞬苦しそうな声を出した。
「り、莉紗、ひどい……」
「調子乗りすぎ」
不満を言いながらも、私はこっそりほくそ笑んだ。――悠斗も私のこと大好きでしょ?言葉にはしないけど、私は胸の内で言い返した。
*****
週末、私は一人でスーパーに買い物に来ていた。私の家からだと、コンビニよりスーパーの方が近くて、よく利用する。夕飯時だからか、店内は結構混雑していた。そこで私は予想してなかった背中を見つける。
「……悠斗?」
見間違いかと思ってよくよく見るが、やっぱり悠斗だった。どうして私の家のそばで?どうしてこんなところにいるの?疑問はたくさんあったが、思わず会えたことが嬉しくて悠斗に駆け寄ろうとする。
「悠――」
「悠斗」
でも私より先に、違う女性が悠斗を呼び止めた。悠斗は私じゃなく、その女性の方を振り返る。
その人は、ロングヘアの妊婦さんだった。二人は話をしながら歩き出す。そこまでは別に良かった。ただ、その人と一緒に歩き出した悠斗が一瞬、堪えるような悲しい顔をした。――その表情に、私の息が止まった。
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