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「じゃあ悠斗は、ちゃんと莉紗ちゃんを家まで送っていって」
「は?」
「だってもう暗いし。若い女の子は危ないでしょ?」
亜希さんが至極当然のように言うが、悠斗は眉間にしわを寄せる。
「荷物持ちで俺が借り出されたんじゃねぇの?持てるの?」
「頑張ったら持てる。大丈夫」
亜希さんが屈託なく微笑む。すると、悠斗は大きなため息をついて、私の方へ向き直った。
「莉紗、ちょっとだけ待っててくれる?荷物だけ届けて戻ってくるから」
「え?私、別に――」
「ダメ!莉紗ちゃん、待たせることになる!」
そして、なんと悠斗と亜希さんは、道の真ん中で言い合いを始めた。通っていく人たちが何事かとこっちを見るけど、お構いなしだ。居たたまれなくなって、私は声を張り上げた。
「それじゃ、私も一緒に荷物持ちします!」
*****
結果、『私も一緒に亜希さんの家に行き、その後悠斗に送ってもらう』ということになった。亜希さんは渋っていたけど、悠斗と私が強引に押し切った。というか、そもそも私は別に送ってもらわなくてもよかったんだけど。
亜希さんは、嬉しそうに私たちの馴れ初めなんかを聞いてきた。その度に悠斗は、面倒くさそうな顔をしながら、はぐらかしたり、誤魔化して答えたりする。良い姉弟なんだと分かる。仲が良くて、お互いに信頼している。
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