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はっとして口を閉じた。でも、後悔したってもう遅い。言葉は、言ってしまったら戻らない。悠斗は諦めたような顔をして微笑んだ。
「……そう、姉弟なのに」
その笑顔を見て、私の目から涙が落ちた。――違う、悠斗。謝るのは私の方なのに。私は涙を懸命に拭った。
悠斗が1番よく分かってるんだ。実らない恋をしていることを、辛い恋をしていることを。それなのに私は、悠斗を攻めた。私、なんてひどい女なんだろう。
悠斗が私の肩を抱いて『送ってく』と言ってくれた。その腕が温かくて優しい。私は悠斗の顔を見上げた。……悠斗にそんな悲しい顔させたい訳じゃなかっのに。 また涙が落ちた。
――『そうだなー。莉紗ちゃん、俺のこと大好きだからなー』
そう。私は悠斗が大好き。だから、悠斗が1番好きなのが私じゃなくてもいい。私は悠斗の手をそっと握った。
私も悠斗に嘘をついている。本当は悠斗の1番になりたい。でも、それだと私は悠斗の彼女になれなかった。だから私は嘘をつく。
……悠斗の1番好きな人が亜希さんでも、私はこの手を放したくない。
悠斗の隣にいられるなら、私は2番目でもいい。
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