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亜希姉は今、幸せだと思う。素敵な旦那さんがいて、子どもができて、今まさに最高に幸せだと思う。……だからこそ俺は、亜希姉の弟でありたいのに。俺は膝を抱えてうずくまる。
おめでとうって言った時、ちゃんと笑えてたか?変な顔してなかったか?っていうか、俺と宗介さんじゃ全然タイプが違うだろ。諦めろよ、いい加減。いい加減捨てろよ。何年同じこと考えてんだよ。
――『そんな簡単に捨てられたら、苦労しない』
頭の中のもう一人の俺が囁く。
『捨てられないから、何年も同じこと考えてるんだろ?亜希姉のためにとか言って、結局自分が楽になりたいだけだろ?諦めたいだけだろ?なくしたいだけだろ?この感情を』
そうだ。それなのに結局捨てられなくて、ぐるぐるループを繰り返す。
……亜希姉。
キスしたい。触りたい。俺のこと見て。俺を弟以上に思って。俺を男として見て――。
「はっ。馬鹿じゃねぇの?」
自分の思考に、自分で笑う。そんなことできるわけない。言えるわけない。そんなことしたら亜希姉、確実に泣く。俺は亜希姉の泣き顔だけは見たくない。
「悠斗ー!ご飯できたよー!」
亜希姉の声だ。俺は腰を上げ、またリビングに向かう。結局行きつく先はいつも一緒なんだ。……俺は、亜希姉に対する恋愛感情を捨てたい。
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