1.『捨てたい感情』~近藤悠斗の場合~

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***** キャンパスの学生ラウンジは、昼のピークを過ぎ、人の姿はまばらだった。俺は辺りを見渡し、お目当ての人物を見つける。 「政宗(まさむね)(れん)!」 二人も気づいてこっちに手を振ってくれる。俺は、二人の向かいの席に座った。 同じ経済学部3年の矢尾(やお)政宗(まさむね)と、佐伯(さえき)(れん)。蓮とは高校の時から一緒で、政宗とは講義で隣の席だったのをきっかけに仲良くなった。時間があれば、よく三人でつるんでいる。 「話があるって、なに?」 蓮が俺に訊ねる。講義の合間の時間に、俺が二人を呼び出したのだ。 「いや、あの……。あのさ……」 「なんだ?歯切れ悪いな」 政宗が首を傾げる。二人の顔を見て、俺は正直に打ち明けた。 「実はさ……。サークルの子に、二人を紹介してほしいって、言われまして……」 「……悠斗」 「いや!分かってる!分かってるよ、政宗の言いたいことは!」 俺は手を合わせてお願いする。 「でも、俺にも付き合いってもんがあるんだよ。一回会ってみてくんねぇ?」 政宗は盛大にため息をついた。はっきり言って、二人はイケメンなのだ。政宗は剣道部で、背が高くがたいもいい。蓮はおしゃれな上、年上受けする甘い顔立ち。そんな見た目の男を、肉食女子は放って置かないのだ。
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