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「姉さんにアタシを頼むって頼まれた癖に……」
ボソリと呟いた日高の言葉に、勢いよく扉を開けた。
「オマエッ! あんとき寝てたんじゃねーのかよっ!」
慌てる神代を見て、日高がニヤリとする。
「うふふ。これからも“末永く”よろしくね」
右手を差し出す日高の手を神代は叩いた。
「オレは“やなこった”って言ったからな。つか、”末永く”とは一言もいってねーよ! 盛るんじゃねぇっ」
日高をジロリと睨む。
しかし彼女は、そんなことは聞いてませんとばかりにむりやり神代の腕に自分の腕を絡めてきた。
「亡き姉の遺言ですから。頼りにしてますよ」
満面の笑顔を見せる日高に、神代は苦虫を噛み潰したような顔をする。
そんな二人の間に割って入るかのように、神代にタックルをかまし、“絶対に離さない”とばかりに田口が腰に抱き着いてきた。
「神代きゅぅんっ! 俺が信頼できる霊能者は神代きゅんしかいないんだよぉぉぉ」
泣きながら懇願する肉達磨……もとい、田口と、何故かニヤニヤしている日高を見て神代は肩を竦めた。
「はぁ……しゃあねぇな。そのかわり、知ってるだろ? オレ。高いよ?」
著名人の依頼人というのが、まさかの二人。
サブ霊能者として彼らに振り回され、面倒事に巻き込まれるんだろうと、神代は苦笑するのであった。
了
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