2、比較歴史学

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2、比較歴史学

   そんな私に目をつけたのはマスコミだった。歴史解説者としてメディアに登場することになり、スポーツ解説者や料理研究科よろしくコメンテーターとしての席があたえられた。メディアが私に要求したのは、政治色を抑えた客観的な視点だった。歴史に対する解釈はともすれば極端なナショナリズムに走りがちだ。これを誰の目にも公平に解説しなければならない。  当初、私を支持していたのは、良識派を自称する人々だった。彼らは何でもかんでも、民主主義やヒューマニズムに照らしてどうか、という点を価値の判断基準にしているような人種だった。残念なことに、歴史の多面性や多義性については理解する能力をもっていなかったようだ。彼らは長篠の合戦の映像を見ては命の大切さを訴え、織田信長を虐殺者と非難する。また、江戸時代がいかに豊かだったかという映像をみても、所詮は差別を肯定した時代だと非難する。要するにウザい人々だったのだ。
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